はじめに
営業資料、提案書、会社案内、補助金資料、展示会資料、Webページなどを作っていると、「内容は悪くないはずなのに、なぜか伝わりにくい」と感じることがあります。
その原因は、文章量やデザインの見栄えだけではありません。
色の使い方、文字の読みやすさ、余白、情報の順番、視線の流れが整理されていないと、読み手はどこを見ればよいのか判断しにくくなります。
特に中小企業では、経営者や少人数の担当者がPowerPoint、Word、Canva、Excel、Webページなどを自作することも多くあります。毎回デザイナーに依頼できるとは限りません。
だからこそ、資料づくりでは「きれいに見せる」よりも、まず「相手が誤解なく読み取り、判断しやすい状態にする」ことが重要です。
本記事では、カラーユニバーサルデザイン、ユニバーサルフォント、UDフォント、視線誘導の考え方をもとに、中小企業の営業資料・提案書を見やすくする実務ポイントを整理します。
資料が伝わりにくい原因は「デザインセンス」だけではない
資料がわかりにくいとき、「デザインセンスがないから」と考えられがちです。
しかし、実務資料で重要なのは、必ずしも装飾的なデザインではありません。
むしろ、以下のような基本が整っているかが重要です。
| 観点 | よくある課題 |
|---|---|
| 色 | 赤・青・緑などの色だけで意味を分けている |
| 文字 | 小さい、細い、詰まっている、フォントが混在している |
| レイアウト | どこから読めばよいかわからない |
| 強調 | 重要箇所が多すぎて、逆に目立たない |
| グラフ | 凡例を見ないと意味がわからない |
| 表 | 情報量が多く、比較すべきポイントが見えない |
| CTA | 問い合わせや次アクションが目立たない |
たとえば、営業資料の中で「重要」は赤、「注意」は緑、「参考」は青のように色だけで分類していると、見る人によっては違いがわかりにくい場合があります。
また、会議室の投影、紙への印刷、スマートフォンでの閲覧など、資料が見られる環境によっても読みやすさは変わります。
資料作成では、見た目の好みだけでなく、読み手の状況を前提にした情報設計が必要です。
カラーユニバーサルデザインとは何か
カラーユニバーサルデザインとは、色の見え方の多様性を前提に、できるだけ多くの人が情報を読み取りやすいように配色や表示方法を工夫する考え方です。
ここで重要なのは、「色を使ってはいけない」という意味ではないことです。
色は、資料の印象を整えたり、情報を分類したり、重要箇所を目立たせたりするうえで有効です。
ただし、色だけに意味を持たせると、情報が伝わりにくくなる場合があります。
W3CのWCAG 2.2では、色を情報伝達の唯一の視覚的手段にしないことが示されており、色に加えて形やテキストなども使うことが推奨されています。これはWebアクセシビリティの文脈ですが、営業資料や提案書にも応用しやすい考え方です。
たとえば、次のような対応が考えられます。
| 避けたい例 | 改善例 |
|---|---|
| 赤字だけで「要注意」を示す | 赤字+「要注意」ラベル+警告アイコンを使う |
| グラフの線を色だけで分ける | 色+線種+マーカー+直接ラベルを併用する |
| 表のセル背景色だけで状態を示す | 背景色+ステータス名を記載する |
| 良否を赤・緑だけで示す | 「良好」「要確認」など文字でも示す |
| 凡例が遠く、色を照合しにくい | グラフ内に直接ラベルを置く |
色は使ってよい。
ただし、色だけに頼らない。
これが資料作成におけるカラーユニバーサルデザインの実務的な基本です。
背景色と文字色のコントラストも重要
資料の読みやすさでは、背景色と文字色のコントラストも重要です。
たとえば、淡いグレーの背景に薄い青文字、濃い色の写真の上に細い白文字、淡い黄色の背景に白文字などは、見た目は柔らかくても、読みづらくなる場合があります。
WCAG 2.2では、通常テキストのコントラスト比は少なくとも4.5:1、大きい文字は少なくとも3:1とされています。Web向けの基準ではありますが、資料作成でも「文字と背景の差を十分に取る」という目安として参考になります。
特に営業資料では、以下のような場面で注意が必要です。
- プロジェクターで投影する資料
- 印刷して配布する資料
- 高齢の経営者や役員が読む資料
- Webページをスマートフォンで閲覧する場合
- 写真やグラデーション背景の上に文字を置く場合
背景と文字のコントラストが弱いと、内容以前に「読む負担」が増えます。
資料を整えるときは、配色の美しさだけでなく、文字が十分に読めるかを確認することが大切です。
ユニバーサルフォント・UDフォントとは何か
ユニバーサルフォント、またはUDフォントとは、できるだけ多くの人にとって読みやすく、判別しやすいことを意識して設計された書体です。
モリサワのUDフォントシリーズは「より多くの人に読みやすいフォント」を目指して開発されており、第三者機関との可読性に関する研究報告も公開していると説明されています。
資料作成では、フォント選びも情報伝達に影響します。
特に以下のような文字は、読み間違いや見落としが起きやすくなります。
- 小さすぎる文字
- 細すぎる文字
- 装飾が強すぎる文字
- 行間が詰まりすぎた文章
- 似た字形が判別しにくいフォント
- 1ページ内でフォントが多すぎる資料
UDフォントを使えばすべて解決するわけではありません。
しかし、営業資料、提案書、会社案内、Webページのように、相手に短時間で内容を理解してもらう資料では、読みやすさを意識したフォント選びが有効です。
資料では、フォントそのものだけでなく、以下も合わせて確認します。
| 観点 | 確認内容 |
|---|---|
| フォントサイズ | 会議室投影や印刷でも読めるか |
| 太さ | 見出しと本文の差が明確か |
| 行間 | 文章が詰まりすぎていないか |
| フォント数 | 複数の書体を使いすぎていないか |
| 強調 | 太字、色、下線を使いすぎていないか |
フォントは、資料の印象を作るだけでなく、読み手の理解負荷を下げる要素でもあります。
視線誘導を意識すると資料は読みやすくなる
資料が見づらい原因の一つに、「次にどこを見ればよいかわからない」という問題があります。
このとき重要になるのが視線誘導です。
視線誘導とは、読み手が自然に情報を追えるように、見出し、本文、図表、強調、余白、配置を整理することです。
営業資料や提案書では、次の順番がわかりやすくなると、読み手の理解が進みやすくなります。
- 何についてのページか
- 結論は何か
- 根拠は何か
- 読み手に何を判断してほしいか
- 次に何をすればよいか
たとえば、1ページの中に、課題、サービス概要、料金、事例、問い合わせ先、補足説明をすべて詰め込むと、読み手はどこから見ればよいかわかりにくくなります。
その場合は、1ページ1メッセージを意識し、情報の優先順位を整理します。
| 悪い例 | 改善例 |
|---|---|
| ページ内に情報を詰め込む | 1ページ1メッセージにする |
| すべてを同じ大きさで書く | 見出し・結論・補足で階層を分ける |
| 強調色を多用する | 強調色は本当に見てほしい箇所に限定する |
| 図表と説明が離れている | 図表の近くに要点を置く |
| 余白が少ない | 関連情報ごとに余白でグルーピングする |
視線誘導は、装飾ではありません。
読み手の判断を助けるための情報整理です。
中小企業の営業資料・提案書で見直すべきポイント
中小企業の営業資料や提案書では、凝ったデザインよりも、まず次の基本を整えることが重要です。
1. 色の意味を固定する
同じ資料内で、赤が「注意」、青が「通常」、緑が「完了」のように意味を決めたら、ページごとに変えないようにします。
色の意味がページによって変わると、読み手が混乱しやすくなります。
2. 色だけで分類しない
「赤はA、青はB、緑はC」のように色だけで分類するのではなく、文字、アイコン、ラベル、線種を併用します。
特にグラフでは、色だけでなく線の種類やマーカーの形を変えると、判別しやすくなります。
3. 文字サイズを小さくしすぎない
資料に情報を入れようとすると、文字を小さくしがちです。
しかし、文字が小さすぎると、読まれない資料になります。
補足情報は別ページに回す、本文を短くする、図表に置き換えるなど、情報量そのものを整理することが必要です。
4. 1ページ1メッセージを意識する
1ページに複数の主張があると、何を覚えてほしいのかが不明確になります。
営業資料では、各ページで伝えたいことを1つに絞ると、相手の記憶に残りやすくなります。
5. 次アクションを明確にする
資料の最後に、問い合わせ、面談、見積依頼、資料請求、現状確認など、次に何をすればよいかを明記します。
資料がわかりやすくても、次アクションが曖昧だと、問い合わせにつながりにくくなります。
Before/Afterで見る資料改善の考え方
以下は、資料改善の考え方を整理した例です。
| Before | 問題点 | After |
|---|---|---|
| 赤字と緑字だけで良否を示す | 色の違いだけに依存している | 色+アイコン+文字で示す |
| グラフの線がすべて細い | 色が見分けにくいと判別しづらい | 線種・マーカーも変える |
| 凡例がグラフから離れている | 色と項目を照合する負担が大きい | グラフ内に直接ラベルを置く |
| 文字が小さい | 会議室投影や印刷で読みづらい | フォントサイズと太さを見直す |
| 重要箇所が多すぎる | どこを見ればよいかわからない | 1ページ1メッセージにする |
このような改善は、デザインを大きく作り替えなくても実施できます。
色、文字、余白、配置、ラベルの付け方を見直すだけでも、資料の読み取りやすさは変わります。
資料作成時のチェックリスト
営業資料、提案書、会社案内、Webページを見直す際は、以下のチェックリストを使うと整理しやすくなります。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 色だけに頼っていないか | 重要度や分類を色だけで示していないか |
| 文字でも意味を示しているか | 「要確認」「完了」「注意」などのラベルがあるか |
| アイコンや線種を併用しているか | 色が見分けにくくても意味が残るか |
| コントラストは十分か | 背景色と文字色の差が弱すぎないか |
| 文字は小さすぎないか | 投影・印刷・スマートフォン閲覧でも読めるか |
| フォント数が多すぎないか | 書体が混在して読みにくくなっていないか |
| 1ページ1メッセージか | 1ページで伝えたいことが明確か |
| 見出しと本文の階層があるか | どこが結論で、どこが補足か分かるか |
| 余白で整理されているか | 関連情報がまとまって見えるか |
| 次アクションが明確か | 問い合わせ、面談、見積などの導線があるか |
このチェックリストは、営業資料だけでなく、会社案内、採用資料、補助金資料、展示会パネル、Webページにも応用できます。
実務で使う際の注意点
カラーユニバーサルデザインやUDフォントは、資料改善に役立つ考え方です。
ただし、万能ではありません。
色を使ってはいけないわけではない
カラーユニバーサルデザインは、色を使わないことではありません。
色だけに頼らず、文字、形、線種、アイコン、配置などを組み合わせて情報を伝えることが重要です。
UDフォントだけで資料が読みやすくなるわけではない
UDフォントを使っても、文字が小さい、行間が狭い、情報量が多すぎる、コントラストが弱い場合は読みづらくなります。
フォントは、資料改善の一要素です。
見た目の美しさと伝わりやすさは同じではない
デザインとして美しくても、読み手が何を判断すればよいかわからない資料は、実務では使いにくくなります。
営業資料や提案書では、相手の判断を助けることが重要です。
読み手の環境を想定する
資料は、パソコン画面だけで見られるとは限りません。
印刷、会議室投影、スマートフォン閲覧、白黒印刷など、さまざまな環境で読まれる可能性があります。
資料を作成したら、可能であれば複数の環境で確認するとよいでしょう。
KAMUSHIRUBEで相談できること
SCI総合研究所株式会社では、技術・DX相談サービスとして、KAMUSHIRUBE を提供しています。
カラーユニバーサルデザインやユニバーサルフォントは、資料をきれいに見せるためだけのものではありません。
相手が誤解なく内容を読み取り、判断しやすくするための情報設計です。
KAMUSHIRUBEでは、たとえば以下のような相談が可能です。
- 営業資料や提案書が相手に伝わる構成になっているか確認したい
- 技術説明資料を経営者にも伝わる形に整理したい
- Webページや会社案内の情報設計を見直したい
- 色使い、フォント、視線誘導の観点から資料を確認したい
- 補助金資料や展示会資料の伝わりやすさを整理したい
- 技術・DXサービスの説明資料をわかりやすくしたい
資料のわかりやすさは、デザインの見栄えだけでなく、色、文字、余白、視線誘導、情報の優先順位によって変わります。
まずは既存資料を棚卸しし、どこが伝わりにくいのかを確認することが重要です。
まとめ:見やすい資料は、相手の判断を助ける情報設計である
中小企業の営業資料や提案書では、派手なデザインよりも、相手が理解しやすく、判断しやすい情報設計が重要です。
カラーユニバーサルデザインでは、色だけに頼らず、文字、アイコン、線種、ラベル、配置を組み合わせて情報を伝えます。
ユニバーサルフォントやUDフォントは、読みやすさを意識した資料づくりに役立ちます。
視線誘導では、タイトル、結論、根拠、次アクションの順に、読み手が自然に情報を追えるように整理します。
資料を見直す際は、以下を確認するとよいでしょう。
- 色だけで意味を伝えていないか
- 文字やアイコンでも意味を示しているか
- 背景色と文字色のコントラストは十分か
- フォントサイズや行間は読みやすいか
- 1ページ1メッセージになっているか
- 結論、根拠、次アクションが明確か
- 問い合わせや相談の導線がわかりやすいか
自社の営業資料、提案書、会社案内、Webページが「見た目は整っているが、相手に伝わりにくい」と感じる場合は、SCI総合研究所の KAMUSHIRUBE をご検討ください。
カラーユニバーサルデザイン、ユニバーサルフォント、視線誘導、情報の優先順位づけなどの観点から、資料や情報発信の見直しを支援します。
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参考資料
- W3C WCAG 2.2 Understanding: Use of Color
- W3C WCAG 2.2 Understanding: Contrast Minimum
- モリサワ UD書体

