値引率を上げれば販売数量も比例して増える、とは限りません。商品によっては小さな値引きで反応が立ち上がる一方、一定水準を超えると追加値引きの効果が小さくなる場合があります。今回は、こうした商品ごとの差を個別の折れ線だけで比較するのではなく、値引率と商品感応度からなる一つのresponse surfaceとして可視化しました。
この図は何を表しているのか
横方向は値引率、縦方向は商品固有の潜在的な値引き感応度を表します。背景の濃淡は、通常販売時を1.0とした期待販売数量倍率です。
等高線は、同じ販売数量倍率となる場所を結んでいます。たとえば同じ1.5倍という反応でも、感応度の高い商品と低い商品では必要な値引率が異なります。
accent色の水平線は代表商品です。各商品について、値引率を0%から50%まで動かしたとき、surface上のどの反応領域を通過するかを示しています。
可視化から読み取れること
今回のSynthetic Dataでは、40%値引き時の期待販売数量倍率は商品によって1.16倍から2.04倍まで広がり、中央値は1.49倍でした。同じ値引率でも、商品間で反応の大きさが一致しない構造を設定しています。
また、商品別の最大反応倍率の平均は1.54倍でした。
さらに、30%から40%へ値引率を10ポイント追加したときの販売数量倍率の増分が、10%から20%へ追加したときより小さかった商品は73.6%でした。このSynthetic Dataでは、多くの商品で追加値引きに対する反応が次第に小さくなる構造が現れています。
この構造をどう解釈するか
今回のsurfaceは、実際の販売データから推定された価格弾力性を示しているわけではありません。商品ごとにsensitivity、threshold、saturationをGround Truthとして設定し、その関係から販売数量倍率を生成しています。
したがって、surface上の急な変化は「値引きに対する反応が立ち上がる領域」、等高線が横方向へ広がる部分は「追加値引きをしても反応倍率があまり変わらない領域」と解釈できます。
可視化の仕組み
各商品には、通常販売数量、値引き感応度、反応threshold、最大反応倍率を設定しました。値引率と販売数量倍率の関係にはsigmoid型の関数を使用しています。
sigmoidを使うことで、値引きが小さい領域では反応が弱く、threshold付近で反応が立ち上がり、その後はsaturationへ近づく構造を表現できます。商品ごとにparameterを変えることで、同じ値引率でも異なる反応曲線が得られます。
その商品別反応を、感応度軸に沿って連続的に平滑化したものが背景のresponse surfaceです。等高線は同じ販売数量倍率を結び、代表商品はaccent trajectoryとして重ねています。
なぜこの可視化方法を選んだのか
今回のテーマでは、「値引率と販売数量の関係が曲線になる」ことだけでなく、「その曲線自体が商品ごとに異なる」ことを同時に示す必要があります。
商品ごとの折れ線を多数重ねる方法でも非線形性は確認できますが、商品間の違いを一つの連続構造として捉えるにはresponse surfaceが適しています。等高線を加えることで、同じ反応倍率へ到達するまでに必要な値引率の差も読みやすくなります。
実データへの応用可能性
実データでは、POSやECの価格変更履歴、販売数量、商品属性を組み合わせることで、商品ごとの値引き反応を探索できる可能性があります。
たとえば、ある値引率を超えると販売数量の増分が小さくなる商品や、逆に一定以上の値引きで初めて反応が立ち上がる商品を探す用途が考えられます。こうした構造は、価格施策の仮説形成に利用できます。
ただし、観測データでは値引きと同時にキャンペーン、季節、在庫、広告、競合価格なども変化するため、可視化された反応だけから値引きの因果効果を判断することはできません。
データと分析方法
今回はSynthetic Dataを使用しています。商品数は72、値引率は0%から50%まで2.5ポイント刻みで21水準、合計観測数は1512です。乱数シードは260926です。
各商品にsensitivity、threshold、saturation、baseline quantityを設定し、sigmoid型のresponse functionから期待販売数量倍率を生成しました。その後、観測値には小さな乗法ノイズを加えています。
このVisualization Studyの限界
今回の非線形構造はSynthetic DataのData Generating Processによって設定されています。sigmoid型のresponseを仮定しているため、実データで同じ形が現れるとは限りません。
また、surfaceの縦軸に使用している潜在値引き感応度は、実務で直接観測される変数ではありません。実データでは、商品属性や過去の価格反応から推定する必要があります。
さらに、価格と販売数量の関係には交絡要因が多く存在します。このStudyはresponse structureの可視化を目的としており、値引き施策の因果効果や利益最適化を実証するものではありません。
まとめ
今回は、値引率を上げても販売数量が比例的には増えず、商品ごとに異なるthresholdとsaturationを持つ状況をresponse surfaceとして可視化しました。
surface、等高線、代表商品のtrajectoryを組み合わせることで、個々の反応曲線をばらばらに見るのではなく、商品間で連続的に変化する「反応の地形」として捉えています。
この見方は、実データでも値引きに対する反応の違いを探索し、追加分析につながる仮説を作るための一つの方法として利用できます。

