品質不良を調べるとき、個々の不良batchだけを並べても、共通する背景が見えにくいことがあります。同じ材料ロット、同じ設備、同じ工程条件が別の時期に再び組み合わさり、似た不良へつながるのであれば、不良は単発の点ではなく「系譜」として捉えられます。今回は、その組み合わせの再出現をDefect genealogy networkとして可視化しました。
この図は何を表しているのか
図は左から、材料ロット、設備、工程条件、不良イベント、不良モードの順に並んでいます。
一つの不良イベントには、実際にそのbatchで使われたmaterial lot、machine、process conditionの3方向からedgeが入ります。右側では、そのイベントが観測されたdefect modeへ接続します。
不良イベントの色は亀裂、寸法不良、表面不良、空隙の4 modeを表し、node sizeはsynthetic severityです。Exact 3-factor lineageに一致するイベントではincoming edgeをbackgroundより濃くしています。
不良イベント同士を結ぶ細いyellow arcは、同じexact lineageがproduction sequenceの後の時点でも再出現したことを示します。このarcは因果伝播ではなく、同じfactor combinationが繰り返されたことを表すrelationです。
可視化から読み取れること
今回のSynthetic Dataでは320 batchesを生成し、そのうち55 batches、17.2%でdefectが発生しました。
Exact 3-factor lineageに一致した条件ではdefect rateが64.6%でした。2-factor partial matchでは15.0%、backgroundまたは1-factorだけの条件では3.3%でした。
Exact lineageのdefect rateはbackgroundの19.8倍でした。また、全defect eventのうち76.4%がexact lineage conditionで発生しています。
Exact lineage conditionでdefectが発生した場合、Ground Truthとして設計したdefect modeと実際にsampleされたmodeが一致した割合は88.1%でした。
この構造をどう解釈するか
今回のData Generating Processでは、8つのhigh-risk lineageを明示的に設計しています。各lineageは特定のmaterial lot、machine、process condition、defect modeの組み合わせです。
たとえば一つのlineageが時間をおいて再びproduction sequenceへ現れると、同じ3つのfactor nodeから別のdefect eventへedgeが伸びます。これが繰り返されることで、network上にlineage bundleが形成されます。
Defect probabilityはexact 3-factor matchで0.68、2-factor matchで0.20、その他で0.055としました。ただし実際のdefect発生は確率的で、defect modeにもnoiseを持たせています。そのためGround Truthをそのまま100%再現する決定論的networkではありません。
可視化の仕組み
Materialは6 family・24 lots、Machineは8台、Process conditionは7種類、Defect modeは4種類です。
320 batchのうち64 batchには8 lineageを8回ずつproduction sequenceへ分散して埋め込みました。残りのbatchはmaterial lot、machine、conditionを確率的に割り当てています。
各batchについて8 lineageとの一致数を計算し、最大match数を0〜3で求めました。そのmatch strengthに応じてdefect probabilityを設定しています。
可視化ではdefectが発生したbatchだけをevent nodeにし、actual factor combinationとdefect modeをedgeで接続しました。
なぜこの可視化方法を選んだのか
材料別、設備別、工程条件別にdefect rateを集計すると、それぞれのfactor単独の傾向は確認できます。一方、今回見たいのは複数factorが同時に再出現する構造です。
Defect genealogy networkでは、一つの不良イベントへmaterial、machine、process conditionのedgeを同時に集められます。そのため、同じ3方向から繰り返しedgeが束になる場所をfactor combinationの再出現として見ることができます。
さらにdefect eventをmodeごとのbandへ配置することで、同じlineageがどの不良familyへ結びつきやすいかも同じ図で確認できます。
実データへの応用可能性
実データでは、製造batch ID、材料lot、設備ID、process recipeやcondition category、検査結果、不良mode、production timestampなどがあれば、同様のgenealogy structureを探索できる可能性があります。
たとえば材料単独では目立たないものの、特定machineと特定conditionが組み合わさったときに同じdefect familyが繰り返されていないかを確認できます。
ただし実データではlot genealogy、設備maintenance、operator、環境条件など追加factorも影響するため、networkは仮説形成と追加確認の入口として扱う必要があります。
データと分析方法
今回はSynthetic Dataを使用しています。Production batch数は320、material lot数24、machine数8、process condition数7、defect mode数4、乱数シードは260927です。
Ground Truthとして8つのthree-factor lineageを設定し、exact match、2-factor partial、background / 1-factorでdefect rateを比較しました。
Main Visualizationにはdefect batchだけを表示し、material lot、machine、condition、defect event、defect modeをdirected relational structureとして配置しています。
このVisualization Studyの限界
今回のlineageはSynthetic Dataとして明示的に埋め込んだ構造です。実際の製造不良が3因子の組み合わせだけで説明できることを示すものではありません。
Exact 3-factor conditionに高いdefect probabilityを設定しているため、今回のrelative risk 19.8倍はData Generating Processに依存します。
また、network上のedgeはbatchに記録されたfactor relationを表しますが、個々のfactorがdefectを因果的に発生させたことを証明するものではありません。特にevent間のyellow recurrence linkは同一lineageの再出現を示すだけで、defectが次のdefectを引き起こしたという意味ではありません。
実データではsampling bias、検査精度、unobserved confounder、factor間の相関も考慮する必要があります。
まとめ
今回は、品質不良を材料・設備・工程条件の組み合わせとして捉え、Defect genealogy networkとして可視化しました。
Synthetic Dataでは、exact three-factor lineageでbackgroundより高いdefect rateが現れ、同じfactor combinationから同じdefect modeへ繰り返しedgeが伸びる系譜構造が形成されました。
この見方は、個別の不良記録を単発の点として扱うだけでなく、複数factorの再出現とdefect familyの関係を探索するための一つの方法になります。

