マーケティング分析に使えるオープンデータまとめ|顧客分析・EC分析・市場調査に役立つ公開データ

はじめに

マーケティング分析を始めたいと思っても、最初から自社の顧客データや購買データを使えるとは限りません。

個人情報の取り扱い、社内承認、データ品質、システム連携、分析環境などの問題があり、「まずは公開データで分析の流れを試したい」という場面は多くあります。

また、マーケティング担当者やDX担当者が社内でデータ活用を説明する際にも、オープンデータや公開データセットは役立ちます。実データに近い形式のデータを使うことで、RFM分析、顧客セグメンテーション、EC行動分析、キャンペーン反応分析、市場調査などを試しやすくなるためです。

ただし、オープンデータは「無料で自由に何でも使えるデータ」ではありません。データごとに、提供元、ライセンス、引用方法、対象国、対象期間、対象業界、商用利用条件を確認する必要があります。

本記事では、マーケティング分析に使えるオープンデータを、顧客分析、購買分析、EC分析、キャンペーン反応分析、市場調査、検索トレンド分析の用途別に整理します。

マーケティング分析でオープンデータを使う意味

マーケティング分析では、以下のようなデータがよく使われます。

  • 顧客データ
  • 購買履歴
  • 商品カテゴリ別の売上
  • ECサイトのアクセス・行動データ
  • 広告・キャンペーン反応データ
  • 市場規模や商業動向
  • 地域別の人口・世帯・産業データ
  • 検索トレンドデータ

自社にこれらのデータが揃っていればよいですが、実務では必ずしもそうではありません。

そこで、公開データを使うことで、以下のような検討ができます。

目的オープンデータの使い方
分析練習PythonやExcelで集計・可視化・分類を試す
社内説明・営業活動マーケティング分析の流れをサンプルで説明する
分析テーマ検討自社データで何を分析すべきか考える
市場理解公的統計や検索トレンドで外部環境を見る
研修DX・データ分析研修の教材として使う

オープンデータは、自社データの代替ではありません。

しかし、自社データを本格的に使う前に、分析の進め方や必要な項目を確認するための材料として有効です。

オープンデータを使う前に確認すべきこと

マーケティング分析にオープンデータを使う場合、最初に確認したいのは以下の項目です。

確認項目確認内容
提供元大学、公的機関、研究機関、企業など
ライセンスCC BY 4.0、独自利用規約、API利用規約など
引用方法データセットの推奨引用表記があるか
商用利用商用利用や二次利用が可能か
対象範囲国、地域、業界、顧客層が自社課題と近いか
対象期間データが古すぎないか
ファイル形式CSV、Excel、APIなど、扱いやすい形式か
個人情報匿名化や利用条件に問題がないか
分析目的顧客分類、購買分析、市場調査などに合うか

例えば、UCI Machine Learning Repositoryの一部データセットは、CC BY 4.0ライセンスで提供されており、適切なクレジット表示を前提に共有・改変が可能とされています。ただし、ライセンスや利用条件はデータセットごとに確認する必要があります。

顧客分析・購買分析に使えるデータセット

Online Retail Dataset

顧客分析や購買分析の練習に使いやすい代表的なデータセットが、UCI Machine Learning Repositoryの Online Retail Dataset です。

このデータセットは、英国のオンライン小売業者における2010年12月1日から2011年12月9日までの取引データを含みます。データには、InvoiceNo、StockCode、Description、Quantity、InvoiceDate、UnitPrice、CustomerID、Countryなどが含まれ、分類・クラスタリング用途が示されています。件数は541,909件です。

マーケティング分析では、以下のような用途に使えます。

  • RFM分析
  • 顧客セグメンテーション
  • 購買頻度の分析
  • 顧客別売上の集計
  • 商品別売上の集計
  • 国別購買傾向の確認

特に、CustomerID、InvoiceDate、Quantity、UnitPriceがあるため、顧客単位の購買履歴を作りやすい点が特徴です。

たとえば、以下のようなRFM分析に使えます。

指標内容
Recency最終購入からの日数
Frequency購入回数
Monetary購入金額

ただし、英国のオンライン小売業者のデータであるため、日本国内のBtoB商材や店舗ビジネスにそのまま当てはめるのは適切ではありません。あくまで、分析練習や社内説明用のサンプルとして使うのが現実的です。

Wholesale customers Dataset

商品カテゴリ別の購買傾向や顧客分類を試したい場合は、UCIの Wholesale customers Dataset も候補になります。

このデータは、卸売業者の顧客について、Fresh、Milk、Grocery、Frozen、Detergents_Paper、Delicassenなどの商品カテゴリ別の年間支出を含み、分類・クラスタリング用途が示されています。

マーケティング分析では、以下のような用途に使えます。

  • 商品カテゴリ別の支出傾向
  • 顧客の購買パターン分類
  • 顧客セグメンテーション
  • 卸売・小売チャネルの違い
  • カテゴリ別の優先提案の検討

データ規模は大きくありませんが、Excelでも扱いやすく、カテゴリ別購買データの練習に向いています。

EC・Web行動分析に使えるデータセット

Online Shoppers Purchasing Intention Dataset

ECサイトの行動分析を試す場合は、UCIの Online Shoppers Purchasing Intention Dataset が候補になります。

このデータセットは、12,330セッションの特徴量を含み、Revenueをクラスラベルとして利用できます。Administrative、Informational、ProductRelatedなどのページ種別ごとの訪問数や滞在時間、BounceRates、ExitRates、PageValues、SpecialDay、VisitorType、Weekendなどが含まれます。

マーケティング分析では、以下のような用途に使えます。

  • ECサイトの購買意向分析
  • CVRに関係する行動特徴の確認
  • 直帰率・離脱率・ページ価値の分析
  • 新規訪問者と再訪問者の違い
  • 特定日や季節性の影響確認

ECサイトの分析では、単にアクセス数を見るだけでなく、どのページを見たか、どのくらい滞在したか、最終的に購入したかを合わせて見ることが重要です。

ただし、公開データではサイトの業種や商品、施策内容が自社と異なるため、結果をそのまま自社ECに適用することは避けるべきです。

キャンペーン反応分析に使えるデータセット

Bank Marketing Dataset

マーケティングキャンペーンの反応分析を試す場合は、UCIの Bank Marketing Dataset がよく使われます。

このデータは、ポルトガルの銀行による電話ベースのダイレクトマーケティングキャンペーンに関するデータです。目的変数は、顧客が定期預金を申し込んだかどうかを表す y です。データには、年齢、職業、婚姻状況、教育、ローン有無、接触回数、前回キャンペーン結果などが含まれます。

マーケティング分析では、以下のような用途に使えます。

  • キャンペーン反応率の分析
  • 顧客属性と反応の関係確認
  • 接触回数と反応率の確認
  • 前回キャンペーン結果の影響確認
  • 分類モデルの練習
  • 施策効果分析の考え方の理解

ただし、このデータは銀行の電話キャンペーンを対象としているため、EC、BtoB営業、店舗販促などにそのまま当てはめるものではありません。

実務では、自社のチャネル、商品単価、購買サイクル、営業プロセスに合わせてデータ項目を設計する必要があります。

市場調査・地域分析に使える公的統計

e-Stat

日本国内の市場調査や地域分析を行う場合、政府統計の総合窓口である e-Stat は重要な情報源です。

e-StatのAPI機能では、政府統計の総合窓口で提供している統計データを、機械判読可能な形式で取得できます。APIを利用するには、e-Statでのユーザ登録が必要です。

マーケティング分析では、以下のような用途に使えます。

  • 地域別人口の確認
  • 世帯構成の確認
  • 年齢階級別人口の把握
  • 消費や家計関連統計の確認
  • 商圏候補地域の比較
  • 店舗展開や地域販促の基礎資料作成

公的統計は信頼性が高い一方で、マーケティング施策に直結する粒度ではないこともあります。そのため、自社の顧客データや商談データと組み合わせて使うことが重要です。

商業動態統計

小売や流通の市場動向を見る場合は、経済産業省の 商業動態統計 が参考になります。

商業動態統計は、全国の商業を営む事業所および企業の販売活動などの動向を明らかにすることを目的とした統計です。経済産業省のページでは、結果の概要、統計表、利用上の注意、用語の解説などが公開されています。

マーケティング分析では、以下のような用途に使えます。

  • 小売販売額の動向確認
  • 業態別の販売傾向確認
  • 市場全体の動きの把握
  • 自社売上と市場動向の比較
  • 業界全体の季節性確認

たとえば、自社の売上が伸びている場合でも、市場全体も同じように伸びているのか、自社だけが伸びているのかを確認することで、解釈が変わります。

RESAS

地域や商圏を考える場合、RESAS(地域経済分析システム) も候補になります。

RESASは、地域経済に関するデータを可視化するためのシステムで、RESAS-APIの提供情報も公開されています。RESAS-APIのページではAPI仕様書へのリンクが掲載されています。

マーケティング分析では、以下のような用途に使えます。

  • 地域別の人口動態確認
  • 産業構造の確認
  • 観光・地域経済の把握
  • 出店候補地域の比較
  • 地域特性に応じた販促検討

地域密着型の小売、サービス業、観光、食品、BtoB営業などでは、地域データはマーケティング判断の補助材料になります。

検索トレンド・関心度分析に使えるデータ

Google Trends

検索関心の推移を確認したい場合は、Google Trends が使えます。

Google Trendsは、Googleで行われた実際の検索リクエストのサンプルを、匿名化、分類、集計して表示します。また、検索データは比較しやすいように正規化され、0〜100の範囲でスケーリングされます。

マーケティング分析では、以下のような用途に使えます。

  • 検索関心の季節性確認
  • 商品カテゴリ名の比較
  • 地域別の関心度比較
  • キャンペーン前後の関心変化確認
  • コンテンツテーマの候補探索
  • 市場ニーズの仮説づくり

ただし、Google Trendsは科学的な世論調査ではなく、検索関心を示すデータです。Google公式FAQでも、結論を出す前に他のデータと合わせて使うべきと説明されています。

そのため、Google Trendsだけで需要予測や売上予測を行うのではなく、検索関心を把握する補助データとして使うのが現実的です。

用途別:マーケティング分析に使えるオープンデータ一覧

分析テーマ使えるデータ例主な分析例注意点
顧客セグメンテーションOnline RetailRFM分析、購買頻度、購買金額英国オンライン小売のデータであり、自社業界とは異なる可能性がある
購買カテゴリ分析Wholesale customers商品カテゴリ別支出、顧客分類データ規模は小さいが、Excelでも扱いやすい
EC行動分析Online Shoppers Purchasing IntentionCVR、離脱率、ページ価値実際の自社サイトとは構造や商材が異なる
キャンペーン反応分析Bank Marketing反応率、接触回数、顧客属性銀行の電話キャンペーンであり、他業種への適用には注意
市場動向分析商業動態統計小売販売額、業態別動向自社売上との比較には分類や期間の整合が必要
地域・商圏分析e-Stat / RESAS人口、世帯、地域特性地域粒度や最新性を確認する必要がある
検索関心分析Google Trends検索関心の推移、地域比較相対値であり、検索ボリュームそのものではない

自社データとオープンデータの組み合わせ方

オープンデータは、自社データと組み合わせることで実務に近づきます。

たとえば、以下のような使い方が考えられます。

自社データ外部データ分析の例
売上データ商業動態統計自社売上と市場全体の動きを比較する
顧客住所e-Stat / RESAS地域特性と顧客分布を比較する
Web問い合わせ数Google Trends検索関心と問い合わせ数の関係を見る
EC購買履歴Online Retailで学んだRFM分析自社顧客のRFM分析に応用する
キャンペーン履歴Bank Marketingで学んだ反応分析接触回数や反応率の見方を整理する

このとき重要なのは、公開データの結果をそのまま自社に当てはめないことです。

公開データは、分析方法を学ぶ材料、自社データの設計を考える材料、市場や外部環境を見る材料として使うのが適切です。

マーケティング分析でオープンデータを使う際の注意点

ライセンスと引用を確認する

データセットごとに、利用条件や引用方法は異なります。

UCIのデータセットのように、推奨引用表記やDOI、ライセンスが記載されている場合は、それに従う必要があります。

対象国・業界・期間を確認する

海外のECデータや銀行キャンペーンデータは、分析練習には有用ですが、日本の中小企業の実務とは異なる場合があります。

分析結果をそのまま施策に使うのではなく、自社の業界、顧客層、商材、購買プロセスと照らし合わせる必要があります。

公開データは自社データの代替ではない

公開データでは、自社の顧客行動、営業プロセス、商談履歴、購買理由まではわかりません。

実務でマーケティング判断を行うには、自社データ、外部データ、現場知見を組み合わせることが重要です。

分析結果を施策に直結させすぎない

オープンデータで得られた傾向は、あくまでそのデータの範囲での傾向です。

「このデータでこう出たから、自社でも同じ」とは限りません。

分析結果は、仮説づくりや社内議論の材料として扱うのがよいでしょう。

KAMUSHIRUBEで相談できること

SCI総合研究所株式会社では、技術・DX相談サービスとして、KAMUSHIRUBE を提供しています。

マーケティング分析に使えるオープンデータは多数ありますが、どのデータが自社の課題に近いかは、目的によって異なります。

KAMUSHIRUBEでは、たとえば以下のような相談が可能です。

  • マーケティング分析をどのデータから始めるべきか相談したい
  • 顧客分析や購買分析の練習に使えるデータを知りたい
  • 自社データと外部データをどう組み合わせるべきか整理したい
  • Google Trendsや公的統計をどう使えばよいか確認したい
  • 社内向けにマーケティングデータ活用の説明資料を作りたい
  • ExcelやPythonで初期検証する方針を相談したい

オープンデータは、マーケティング分析の練習や分析テーマの整理に役立ちます。

一方で、自社課題に合うデータを選ぶには、目的、対象顧客、利用可能な自社データ、分析後の意思決定を整理する必要があります。

まとめ:オープンデータはマーケティングDXの入口になる

マーケティング分析を始める際、いきなり自社の顧客データや購買データを使うのが難しい場合があります。

そのようなとき、オープンデータや公開データセットは、分析練習、分析テーマの検討、市場理解、社内説明の材料として役立ちます。

本記事では、以下のようなデータを紹介しました。

  • 顧客分析・購買分析に使えるOnline Retail
  • 商品カテゴリ別支出を扱えるWholesale customers
  • EC行動分析に使えるOnline Shoppers Purchasing Intention
  • キャンペーン反応分析に使えるBank Marketing
  • 市場動向を見る商業動態統計
  • 地域・商圏分析に使えるe-StatやRESAS
  • 検索関心を把握するGoogle Trends

ただし、オープンデータだけでマーケティング戦略が決まるわけではありません。

データの提供元、ライセンス、対象国、対象期間、業界、利用条件を確認し、自社データや現場知見と組み合わせて使うことが重要です。

自社のマーケティング課題に対して、どの公開データを参考にすべきか、自社データとどう組み合わせるべきかを整理したい場合は、SCI総合研究所の KAMUSHIRUBE をご検討ください。

オープンデータの選定、分析テーマの整理、Excel・Pythonでの初期検証方針など、実務に合わせた相談が可能です。

お問い合わせは、お問い合わせフォーム よりご連絡ください。

参考文献・データセット