中小企業のDX人材は採用すべき?外注・IT顧問・外部パートナーの違いと選び方

「DXを進めたいので、ITやデータに詳しい人を採用した方がよいのではないか」

中小企業でDX・AI・データ活用を検討すると、このような話が出ることがあります。

一方で、実際に採用を考え始めると、

  • どんなスキルを持った人を採ればよいのか
  • IT、AI、データ分析、セキュリティのどれが必要なのか
  • フルタイム1名分の仕事が本当にあるのか
  • 採用できるまでDXを止めるのか
  • 外注やIT顧問ではだめなのか

といった疑問も出てきます。

DX人材の確保は多くの企業に共通する課題です。IPAの「DX動向2025」では、DXに取り組む日本企業のうち、DX推進人材の量が「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した割合は8割を超えました(IPA, 2025)。

一方、中小企業がDXを進める方法は、専任社員を採用することだけではありません。

本記事では、社員採用、スポット外注、IT・DX顧問、伴走型の外部パートナーを比較し、自社にはどの方法が合うのかを考えるための判断軸を整理します。

DX人材が不足していても「まず採用」とは限らない

2026年7月に公開されたIPAの「DX動向2026」でも、「DX・AIに関する人材」が独立したテーマとして扱われ、DX人材の過不足、育成・確保、AI関連人材の充足状況などが調査されています(IPA, 2026)。

DXに必要な人材を確保することは重要です。

ただし、「人材が不足している」という課題と「社員を1人採用する」という解決策は同じではありません。

たとえば、ある企業で発生している技術関連業務が次のような状態だったとします。

業務頻度必要な専門性社内対応
PC・アカウント管理日常IT基礎一部可能
社内IT問い合わせ日常ITサポート必要
SaaS選定年数回IT・業務設計難しい
生成AI利用ルール随時AI・セキュリティ難しい
売上データ分析月次データ分析難しい
セキュリティ方針定期セキュリティ難しい

この場合、「DX人材を1名採用する」と決めても、その1名に何を担当してもらうのかが曖昧です。

ITサポート、AI、データ分析、情報セキュリティは、それぞれ異なる専門領域です。

まず必要なのは、人を探すことよりも、自社で必要な機能を分解することです。

まず「DX人材に何をしてほしいか」を整理する

採用や外注を比較する前に、現在発生しているDX・IT業務を棚卸しします。

少なくとも、

  • どのような業務があるか
  • 毎日・毎週・毎月・年数回のどの頻度か
  • どの程度の専門性が必要か
  • 社内で対応できるか
  • 社内に長期的に残したい能力か
  • 経営判断を伴うか

を整理します。

たとえば、社員からのPC問い合わせが毎日発生するのであれば、日常的に対応できる担当者が必要かもしれません。

一方、「生成AIの利用規程を確認したい」「新しいSaaSの提案内容を評価したい」「月1回データ分析について相談したい」といった業務は、常勤するほどの業務量ではない場合があります。

ここを区別すると、採用・外注・顧問を比較しやすくなります。

採用・スポット外注・IT顧問・伴走支援の違い

それぞれの特徴を簡単に整理すると、次のようになります。

選択肢向いている状況特徴
社員採用日常的・継続的な業務量がある社内理解や知識を蓄積しやすい
スポット外注成果物・作業範囲が明確必要な仕事だけ依頼しやすい
顧問・アドバイザリー定期的な専門判断が必要常勤せず継続的に相談できる
伴走支援相談だけでなく推進も必要課題整理、技術選定、調整などを継続支援

重要なのは、サービス名称だけで判断しないことです。

「IT顧問」という名称でも、相談だけを行うサービスもあれば、資料作成やベンダー調整まで含む場合があります。

実際には、業務範囲、責任範囲、稼働方法を個別に確認する必要があります。

社員採用が向いているケース

社員採用には、外部支援にはない利点があります。

特に、

  • 毎日の対応が必要
  • 十分な業務量がある
  • 社内の業務・人間関係・システムを深く理解する必要がある
  • 長期的に社内へ保持したい能力である
  • 継続的な改善を主体的に進めてもらいたい

といった場合は、採用を検討しやすくなります。

たとえば、社員数が増え、PC・アカウント・SaaS・ネットワーク・問い合わせ管理などの日常業務だけで相当な時間を必要とするのであれば、情シス担当者を社内に置く意味は大きくなります。

採用の利点は「時間単価が安い」といった単純な比較ではなく、組織の内部に知識と経験を継続的に蓄積できることです。

スポット外注が向いているケース

スポット外注は、依頼したい仕事が明確な場合に使いやすい方法です。

たとえば、

  • Excelデータを分析してレポートを作る
  • 特定システムを構築する
  • セキュリティ診断を実施する
  • AIの技術検証を行う

などです。

開始と終了が比較的明確な仕事であれば、必要な専門家へ一定期間依頼できます。

一方、

「DXを何から始めればよいか相談したい」
「今月届いたベンダー提案を見てほしい」
「半年後に別の技術課題が出てくるかもしれない」

という状況では、毎回新しい委託先を探し、背景説明から始める負担が生じる可能性があります。

IT・DX顧問が向いているケース

顧問・アドバイザリー型は、

専門的な判断は継続して必要だが、専門家が毎日社内にいる必要はない

場合に向いています。

たとえば、

  • AIサービスを導入してよいか相談する
  • ベンダー見積もりの内容を確認する
  • データ分析の方向性を相談する
  • IT投資の優先順位を整理する
  • セキュリティ上の懸念を相談する

といった用途です。

DX・IT領域では毎月同じ作業が発生するとは限りません。

ある月はAI、翌月はデータ分析、その次はセキュリティということもあります。

そのような企業では、「特定作業を依頼する外注」とは別に、会社の背景をある程度共有した状態で技術判断を相談できる相手を持つ方法があります。

「外部技術・データ部門」という考え方

ここでいう「外部技術・データ部門」は、法律上の契約名称や一般的な職種名ではありません。

本記事では、

DX・AI・IT・データ活用・セキュリティについて、常勤社員を配置するほどの業務量ではないものの、継続的な専門判断が必要な企業が、外部専門家によって必要な機能を補完する考え方

を指します。

中小企業では、必要な技術課題が一つの専門領域に収まらないことがあります。

たとえば、

「生成AIを使いたい」

という相談でも、

  • 業務上どこへ使うか
  • 社内データを利用できるか
  • 個人情報や機密情報を入力してよいか
  • 利用規程をどうするか
  • どのサービスを選ぶか

と、業務設計、AI、データ、IT、セキュリティの論点が混在します。

このような状況では、「AI担当者」という1人の人材像に無理にまとめるより、必要な機能を整理した方が現実的な場合があります。

採用前に外部人材を使うメリット

外部人材の利用は、採用をやめるためだけの選択肢ではありません。

採用すべき人材を明確にするために、一時的に外部人材を利用する方法もあります。

たとえば半年間、実際のDX・IT課題を整理すると、

  • 日常的に必要なのは社内ITサポート
  • データ分析は月1回程度
  • セキュリティ判断は四半期に数回
  • SaaS選定は年数回

といった実態が見えてきます。

すると、

「ITサポートを中心に担当する社員を採用し、高度なデータ分析やセキュリティだけ外部へ相談する」

といった役割分担を考えやすくなります。

経済産業省の中堅・中小企業向けDX支援資料でも、DX推進では適切な外部人材を活用しながら、取組を通じてノウハウを蓄積し、必要な内部人材の育成へつなげる考え方が示されています(経済産業省, 2023)。

外部活用と内製化は対立するものではありません。

外部支援を利用するときの注意点

外部人材を利用すれば、社内の責任者が不要になるわけではありません。

特に次の点を整理する必要があります。

社内の意思決定者を決める

外部専門家は技術的な選択肢やリスクを整理できますが、

「この投資を行うか」
「業務をどのように変えるか」

という経営判断を代替するものではありません。

情報・権限の範囲を決める

外部支援では、社内データ、クラウドサービス、システム情報などを共有する場合があります。

秘密保持、アクセス権限、アカウント管理、契約終了時の権限削除などを整理します。

ノウハウを社内へ残す

会議だけ行い、判断理由や手順が残らなければ、外部支援への依存度が高くなる可能性があります。

  • 議事録
  • 判断理由
  • 設計資料
  • 手順書
  • ベンダーとのやり取り

などを残すことが重要です。

中小企業基盤整備機構のJ-Net21でも、中小企業のDXでは適切な外部人材を活用すると同時に、取組を通じてノウハウを蓄積し、必要な人材育成につなげる考え方が示されています(中小企業基盤整備機構, 2023)。

採用か外部活用かを考えるチェックリスト

次の項目を確認してみてください。

  • 毎日対応が必要なIT・DX業務がある
  • フルタイムに近い業務量がある
  • 必要な専門領域を具体的に説明できる
  • 求人票に担当業務を書ける
  • 入社後に人材を評価・育成できる
  • 長期的に社内へ保持したい能力である
  • 一方で、年数回しか発生しない高度な専門判断もある
  • 採用できるまでDXを止めることが難しい
  • ベンダー提案を判断できる人が社内にいない
  • AI・IT・データ・セキュリティなど複数領域の相談が発生する

この結果だけで「採用」「外注」を機械的に決めるものではありません。

ポイントは、必要な業務量と専門性を見えるようにすることです。

外部支援から採用・内製化へ移行してもよい

外部支援を利用し始めたからといって、ずっと外部へ依頼し続ける必要はありません。

たとえば、

外部相談 → 課題・役割整理 → 業務量把握 → 社員採用 → 一部内製化

という流れもあります。

反対に、

社内担当者+高度な専門領域だけ外部支援

という状態を長期間続けてもかまいません。

経済産業省の中堅・中小企業向けDX推進の手引きでも、DXでは経営者や社内担当者が中心的な役割を担いながら、必要に応じて外部人材を活用する考え方が示されています(経済産業省, 2025)。

大切なのは、「全部内製」「全部外注」のどちらかに固定することではなく、自社の成長やDXの進捗に応じて体制を変えていくことです。

KAMUSHIRUBEで相談できること

DX人材の採用を検討していても、

「AI・IT・データのどの専門性が必要なのか」
「このベンダー提案は妥当なのか」
「そもそも今は人を採用する段階なのか」

まで自社だけで判断するのが難しいことがあります。

SCI総合研究所株式会社のKAMUSHIRUBEでは、DX・AI・IT・データ活用について、継続的な技術相談を行っています。

たとえば、

  • DX課題や必要な役割を整理したい
  • ベンダー提案を技術的に確認したい
  • AI・データ活用について壁打ちしたい
  • 大きなプロジェクトにする前に方向性を確認したい

といった段階で利用できます。

KANAMEBAで支援できること

技術相談だけでなく、

  • IT・セキュリティ管理の整理
  • DXプロジェクトの推進
  • ベンダーマネジメント
  • ITガバナンス
  • セキュリティを踏まえたIT環境の整備

など、実際の推進まで必要になる場合があります。

SCI総合研究所のKANAMEBAでは、セキュアなDX推進・ITコンサルティングとして、こうした領域を支援しています。

まず方向性や技術判断を整理したいのか、実際のDX・IT推進まで支援が必要なのかによって、必要な支援範囲は変わります。

まとめ

中小企業がDXを進める際、「人材が足りないから1名採用する」とすぐに決める必要はありません。

まず、

  1. どんなDX・IT業務があるか
  2. どのくらいの頻度で発生するか
  3. どの専門性が必要か
  4. 社内へ残したい役割は何か
  5. 外部で補完できる役割は何か

を整理します。

日常的で十分な業務量があり、組織内部へ知識を蓄積したい場合は採用が有力です。

一方、専門的な判断は必要でも発生頻度が低い場合や、まだ必要な人材像が明確でない場合は、スポット外注、顧問、伴走型支援などを利用しながら役割を明確にする方法があります。

採用と外部活用は二者択一ではありません。

自社に必要な技術判断や役割を整理したうえで、現在の事業規模やDXの段階に合った体制を選ぶことが重要です。

「専任人材を採用するべきか判断できない」「どの専門性が必要なのか整理したい」という段階では、SCI総合研究所のKAMUSHIRUBEでの技術・DX相談もご活用ください。

参考文献